栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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根菜類の根部におけるビタミンCの分布
北川 雪恵
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1971 年 24 巻 5 号 p. 292-297

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抄録

根菜類の根部を上下別数個所に区分し, 各部位におけるV. C量を測定するとともに, 更に根部における組織別V. Cの分布を, 木部肥大型である大根と師部肥大型のにんじんについて検討した.
(1) 収穫期における大根及びにんじんの上下部位によるV. C含量の差異はかなり顕著であり, 先端部と上部に多く下部がこれにつぎ中部が最も少ない。 また, 酸化型 C についても上下差は顕著であり, その順位は総 C の場合と概ね同様である。
(2) 根菜類の根の上部では, V. Cは葉のつけ根に近い程多い。 このことは葉の同化作用に負う所が大きく, また頂端生長点を含んだ細胞分裂の激しい部位に近いこともその一因であると考えられる。
(3) 大豆幼根を用いて, 根の生長とV. C含有量との関係について追求したところ, V. Cは細胞分裂が最も盛んで, 生理作用の旺盛な先端部と胚軸上部に多く, 生長の少ない幼根上部と胚軸下部に少なかった。 また, 酸化型Cについても同様の傾向がみられた。 これらの結果から推定して, 根菜類の根部においても, その生理作用とV. Cとの間には密接な関係があるものと考えられる。
(4) 抽台期のにんじんのV. C量の分布は, 適熟期のものと様相を異にし先端部に最も少なくなったが, これはこの時期になると, 先端部の生長が止って生活現象が衰え, 逆に抽台現象という異常に活発な生活現象がつけ根部分に近い地上部で行なわれているためと思われる。
(5) 組織別の観察では, 木部肥大型の大根, 師部肥大型のにんじんの何れについても, 一般に根の肥大生長を司る形成層を含む維管束周辺部に特に多く, ついで皮部に多かった。 他方, 生活現象の比較的緩やかな貯蔵的役目を持つ柔組織には少なかった。 また, 酸化型Cも同様なことがいえる。 なお, 何れの組織についても, 収穫適期においては, V. Cは先端部と上部に多く, 下部がこれにつぎ中部に最も少なかった。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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