栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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ゲル濾過法によるリノール酸重合体の分離とその微生物の発育に及ぼす影響
田中 正男松井 董明谷口 宏吉
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1972 年 25 巻 7 号 p. 511-517

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抄録

油脂の加熱, または保存中に形成される重合体に関する研究は, その重合体を十分量単離することの困難性からきわめて少ない。また重合油脂の毒性に関する研究も種々の過酸化物, 分解生成物の共存する試料で行なわれており, 重合体そのものに毒性があるか否か不明である。
本研究の一つはアルキル化セファデックスを用いて, 分子篩の原理によるリノール酸の重合体の分離の可能性を追求し, 分離に適したクロマトグラフィーの条件を定めることにある。もう一つは分離した重合体の微生物の発育に及ぼす影響を検討したものである。
セファデックスLH-20を充填した1.5×150cmのカラムで, 溶媒としてメタノールを用い, 40℃でクロマトグラフィーを行なえば重合リノール酸2gを一度に分離することが可能である。60℃, 18日間保存したリノール酸にあっては, 形成した重合体は二量体, 三量体および四量体で, 重合度の進むものほど, 形成量は少ない。
クロマトグラフィーで分離した各重合体区分の毒性を, 微生物の発育に及ぼす影響より検討した。重合体各区分は精製リノール酸と同様, E. coliに対して毒性を示さなかった。リノール酸を炭素源として積極的に取り込む脂肪酸資化酵母に対しては, リノール酸二量体はリノール酸に比べて効率が悪いが, ある程度取り込まれ, 利用されている。三量体になるとさらに効率が悪く, ほとんど利用されない。リノール酸過酸化物を含む区分は, いずれの菌に対しても阻害的に働いている。重合油脂の示す毒性は重合体そのものによるものでなく, 同時に生じる過酸化物によるものである。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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