栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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緑茶中のフッ素含有量と浸出液中のフッ素とナトリウムイオンについて
泉 敬子
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1972 年 25 巻 7 号 p. 573-576

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抄録

1) 市販の緑茶を用いて茶葉および浸出液のフッ素量を測定しかつナトリウムイオンとフッ素イオンとの相関関係を検討した。
2) 緑茶茶葉および浸出液のフッ素含量は112.8~70.9ppmおよび2.5~1.34ppmで産地によりかなりの差が認められ, この場合茶葉中のフッ素の60~80%が浸出液中に溶出されている。
3) ナトリウム含量は茶葉では2252~715ppm, 浸出液では112~89ppmであった。フッ素量の多いものほどナトリウム量も多い。相関関係は茶葉においては0.122で相関係数は低いが実際に飲用する浸出液では0.63でかなり相関関係がある。
4) 使用した茶葉中の水分は8.92~9.45%でほぼ9%前後であった。
5) 茶葉中の灰分含量は4.2~5.3%であった。
6) 水溶性灰分のアルカリ度は11~18.6%であつた。
以上のごとく一般に飲用する状態 (80℃で1分間浸出) で茶葉に含まれるフッ素は浸出液中に60~80%溶出され, その値は1.34~2.5ppmであり, したがつて緑茶を常用する生活環境にある日本においてはとくにムシ歯予防のために水道水中にフッ素を添加する必要はないと思われる。
ナトリウムイオンとフッ素の相関関係が茶葉については低いが浸出液についてはかなり認められたので蒸溜操作の困難であるフッ素の蒸溜定量の代わりに容易に測定できるナトリウムイオンを測ることによりフッ素の多寡を知ることができる。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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