1974 年 27 巻 5 号 p. 211-219
1) 女子大学生にビタミン混合 (サイアミン, リボフラビン, ニコチン酸, パントテン酸, アスコルビン酸, V. A) を与えて暗調応能を測定してみると, 最初不良あるいはやや不良であったものが, 2週間経過するうちに次第に正常な値に改善されるものが現われた。 なお疲労, 風邪あるいは月経のときは暗調応能力は低下した。
2) 学童の場合はビタミン混合の服用だけでは暗調応能は正常にならず, ビタミン混合とともに牛乳あるいはメチオニンを併用すると正常になった。ビタミン混合と牛乳を与えている学童は, これを与えていないクラスの学童に比べ, 風邪に対する抵抗が強いことが示された。
3) 水田地帯の成人の試験で水溶性ビタミン混合からパントテン酸を除いたものよりも, これを加えたもののほうが暗調応能改善効果が高かった。 このことから, パントテン酸も暗調応能に関係することが推定された。
4) 女子短大生に水溶性ビタミン混合とメチオニンを与えると暗調応能はかなり改善されるが, これにV. Aが加えられるまでは正常にならなかった。 尿中クレアチニンは, 女子短大生の場合も農村成人の場合もメチオニンの服用により増加した。 これは, 彼らの食餌に動物性たん白が少ないことを示すものと思われる。 尿中エーテル硫酸は, V. Aの服用により著しく増した。
5) 水溶性ビタミンとメチオニンを与えられている人の暗調応がこれにV. Aを併用した場合に改善される程度は, その人のV. A体内飽和度を示すものと考えられる。 また, 尿中の全硫酸中エーテル硫酸の割合が25%に達しないときは, V. A不足のおそれがある。