抄録
初体重70g前後のWistar系ネズミを用い, P欠乏食により出現する症状の把握およびPの食欲におよぼす影響につき調べることを目的として実験を行ない, 次のような成績を得た。
1. 1カ月間P欠乏群
P欠乏食投与20日目以後, 次第に欠乏による影響が出現し, 摂食量, 体重増加量, 効率の減少を認めた。毎日の観察では, 腹壁筋の軟化が観察された。血液生化学所見, 臓器重量比, 肝, 腎, 副腎, 腹壁筋等の組織標本およびX線写真は, いずれも正常であった。
2. 2カ月間P欠乏群
摂食量は平均17g/日, 体重増加量は平均0.8g/日程度であり, 欠乏群の中でも伸びの良好なもの, 劣るものが現われていった。毎日の観察では, 腹壁筋と四肢の緊張が著明となり, 血液生化学所見ではSGOT 267, SGPT 232と上昇を示し, 肝機能障害を疑わせた。その他の結果は, 正常であった。
3. 3カ月間P欠乏群
摂食量は, 2カ月欠乏群と同様の結果を示した。また体重増加量は, ほぼ全例で増加停止となり最後まで維持していった。効率は次第に低下し, 対照群の10~20%となった。毎日の観察では, 食糞するものが出現し, 腹壁筋の軟・硬の変化が続いていた。また全期間を通じ, 突然死・衰弱死するものは出なかった。血液生化学所見では, 2カ月欠乏と同様SGOT 161, SGPT 106と上昇が認められ, 血清P値のわずかな低下6.2mg/dlを認めた。次に臓器重量比では, 胸腺の萎縮0.07%, 盲腸の拡張6.5%が認められた。また組織標本では, 肝脂肪化の増加が著明であった。腹壁筋にも多少核の集中, 淡染等が認められた。その他は, 正常であった。全期間を通し, 尿蛋白, 尿糖は異常がなかった。
この報告の大要は, 1974年5月の第28回日本栄養・食糧学会総会で発表した。