日本栄養・食糧学会誌
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グアテマラにおけるPEM乳幼児の血液性状, 身体計測指標による免疫能の評価
坂本 元子丹後 俊郎
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1983 年 36 巻 5 号 p. 359-366

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抄録

1) 栄養状態の評価の指標として体位, 皮膚厚, 血液学的所見, 血液生化学的所見, 免疫能 (遅延型皮膚反応, 補体系) をとりあげ, グアテマラの低栄養児41例, 正常児10例を対象に, 免疫系の相互作用とあわせて, 免疫能維持のための栄養状態を検討した。
2) 栄養状態低下の過程において, 体重減少, 筋肉量の低下などの症状が現われる。これらの症状は血液学的所見およびAlb, TPの低下とあわせて観察される。免疫能ではPHA反応が体重減少がみられるころから消失し, 栄養状態の低下はPHAの反応に敏感に影響を与え, 密接な関係が示された。
3) CH50の変化はTPおよびGlobに高い相関を示すが, 体位, 皮膚筋量減少のレベルではまったく関与しない。 ただC4はPHA反応とよく似た形を示すが, これはC4が他の成分と異なり, 遺伝子配列において, Factor BやT細胞上のアロ抗原遺伝子が同一亜領域内に存在することによると推測される。
4) 低栄養状態においては免疫系のうち, 細胞性免疫系と補体系は独立してその役割を果たしていることが示唆された。
5) PHA反応, 補体系を維持するための血液性状の指標を, 低栄養への過程, 低栄養から栄養療法による回復の過程でのPHA反応陽転のレベル, 臨床所見による血液性状などを考慮して推測すると, TPは5.8g/100ml, Hb 8.0g/100ml, Htは26%, Albは3.2-3.5g/100mlを一つの低限と考えることができよう。

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