抄録
1) ペクチン質の分別抽出方法として従来から用いられているBettelheimら1), 三浦ら2) の方法には問題があると思われるので, 野菜を0.01N塩酸溶液 (pH2.0) を加え摩砕後, 同溶液で35℃1日放置を繰り返し, ついで, 0.1M酢酸塩緩衝液 (pH4.0) で同様に数回抽出後, 2%ヘキサメタリン酸ナトリウム溶液 (pH4.0) で90℃, 3.5時間加熱抽出する方法を考案した。
2) 塩酸抽出区分 (A区分) のペクチン質は酢酸塩緩衝液抽出区分 (B区分) と比べてペクチン質のエステル化度が高く, 中性糖含量が多い。A区分のペクチン質は塩化カルシウム添加により沈殿を起こさなかったが, B区分は同じ条件で沈殿を起こした。以上の結果から, A区分とB区分のそれを比較した場合, 前者がメトキシル基と中性糖含量を多く含み, また, そのメトキシル基はガラクチュロン酸からなる鎖に偏らずに分布していると考えられる。
3) 検討した野菜のペクチン質の大部分がAおよびB区分に抽出された。そのため, これら野菜中には共有結合によって不溶化されたプロトペクチンは存在しないと思われる。細胞壁中のペクチン質はヘミセルロース等と共有結合により不溶化しているのでなく, おもにカルシウム等の多価陽イオンの影響により, また細胞壁中の高分子物質問の相互作用などにより不溶化していると考えられる。
4) 野菜の種類によりペクチン質の溶出パターンに差がみられ, 調理の際比較的軟化しやすい野菜はA区分のペクチン質が多く, 軟化しにくい野菜はB区分のペクチン質の割合が多いという結果が得られた。