日本栄養・食糧学会誌
Online ISSN : 1883-2849
Print ISSN : 0287-3516
ISSN-L : 0287-3516
食用油脂の熱安定性に及ぼすトコフェロールの役割
梶本 五郎吉田 弘美芝原 章
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 38 巻 4 号 p. 301-307

詳細
抄録

加熱後の油脂の酸化安定性に及ぼすトコフェロールの役割を検討した。
1) 大豆, とうもろこし, ハイオレイックサフラワーおよびオリーブの各油脂を180℃で10~25時間加熱して, 加熱後の油脂の酸化安定性を重量法試験とオーブン試験で調べた。
大豆油, とうもろこし油よりも自動酸化に対し非常に安定なハイナレイックサフラワー油およびオリーブ油は, 加熱することにより油脂中のToc量と酸化安定性は急減し, それらの低下度合いは大豆油, とうもろこし油よりも大であった。
2) 加熱により減少しただけのTocを補足した場合, 大豆油ととうもろこし油ではほとんど酸化安定性を高めなかったが, ハイオレイックサフラワー油とオリーブ油では酸化安定性を著しく高めた。
3) Tocを除去した大豆油は, 未加熱時でも酸化しやすく, さらに加熱することにより酸化安定性は低下した。加熱したToc除去大豆油にTocを添加することにより, かなり酸化安定性は向上した。しかし, 加熱したハイオレイックサフラワー油およびオリーブ油にTocを添加したときの効果ほどにはいたらなかった。
4) リン酸およびレシチンをオリーブ油に0.1%添加して加熱した場合, 油脂中のToc残存量は無添加油に比べて多く, また, 酸化安定性も高かった。

著者関連情報
© 社団法人日本栄養・食糧学会
前の記事 次の記事
feedback
Top