日本栄養・食糧学会誌
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市販固形飼料摂取によるカニクイザル腸内フローラの加齢による変化
片山 純男三橋 重之大江 道夫
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1986 年 39 巻 3 号 p. 175-179

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抄録

自家繁殖, 継代飼育したカニクイザルにサル用市販固形飼料を給餌し, 年齢別に腸内フローラの変化をしらべた。糞便1gあたりの総菌数は0.5~1歳 (A群), 2~3歳 (B群), 4~5歳 (C群), 6歳 (D群) の4群では1010個に推移したが, 10歳以上 (E群) では109.7とやや減少した。
A~E群のいずれについても, 腸内フローラ中Bacteroidaceae, EubacteriumおよびStreptococcusの3種が優勢で主たるフローラを構成していた。
A群ではこれらの主たるフローラのほかに, Bifidobacteriumが多くみられた。B群ではBifidobacteriumはA群とほぼ同数存在するが, LactobacillusがA群よりも増加した。C群ではMegasphaeraが増加し, Clostridiumが減少したが, 全体としてはB群とほぼ同じ傾向を示した。D群では主たるフローラの構成比率がB群およびC群とかなり異なっているほか, Megasphaeraが全群中でもっとも多かった。E群は主たるフローラの中でStreptococcusが他の群よりも明らかに減少していた。また, Megasphaeraも同様に他の群よりも減少した。
これらの結果から, カニクイザルの腸内フローラは加齢により変化すること, さらにこの変化からカニクイザルを0.5~1歳, 2~5歳, 6歳および10歳以上の4群にわけることができると考えられた。
ヒトの腸内フローラをしらべた他の報告と比較して若干のちがいがみられるが, カニクイザルをヒトのモデルとして栄養, 代謝実験に使用しうるものと考えられた。

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