日本栄養・食糧学会誌
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食事性肥満ラットにおけるタンパク質代謝に対する制限食の影響
尾井 百合子奥田 豊子三好 弘子小石 秀夫
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1987 年 40 巻 1 号 p. 27-34

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抄録

食事性肥満ラットにエネルギー制限食を与えたとき, タンパク質代謝への影響を検討した。
Sprague-Dawley系雄ラットに高脂肪食 (30%Fat群) を投与し, 対照群 (5%Fat群) とともに12週間飼育した。12週間後, 30%Fat群の体重が5%Fat群よりも有意に増加した。この食事性肥満ラットに2週間の食事制限を行なった。すなわち, 飼料摂取量を5g/日に制限し, 飼料中の脂肪含量は全群5%と一定で, 50%カゼイン食群 (HPD), 25%カゼイン食群 (SPD) および5%カゼイン食群 (LPD) とした。2週間後, 体重はいずれも急激に約100g減少した。しかし摂取タンパク質レベルの違いによる体重減少への影響はなかった。
窒素出納は, 5%Fat群より, 30%Fat群が有意に高く, また制限食のHPD群およびSPD群では正の出納を示したが, LPD群で著しい負となった。
体組成のうち, 水分含量は各群間に有意差はなかったが, 脂肪の割合はHPD群がSPD群およびLPD群よりも有意な低下を示し, タンパク質の割合はHPD群が有意に高くなった。
肝組成では, 制限食群間にいずれも重量に差は認められなかったが, LPD群は脂肪含量 (%) およびタンパク重量は, 5%Fat群の値とほぼ等しくなった。
血液性状においては, 血漿中タンパク質濃度は5%Fat群に比べ, HPD群では差はなかったが, LPD群が有意に低下した。
以上のことより, 各制限食での体重減少量は同程度であったにもかかわらず, HPD群では体脂肪だけが減少し, 体タンパク質および肝タンパク質が保持されていたことから, 制限食投与時の食餌中のタンパクレベルは, 体タンパク質代謝に大きな影響をもつということが考えられる。

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