日本栄養・食糧学会誌
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胃切除ラットの消化管の機能ならびに形態に及ぼす食物繊維の影響
宮田 富弘海老原 清中島 昭
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1987 年 40 巻 3 号 p. 199-205

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抄録

胃切除ラットの消化管の機能ならびに形態に及ぼす食物繊維 (DF) の影響を検討した。胃切除手術を施したラットに精製飼料 (FF飼料), FF飼料+10%小麦ふすま, FF飼料+10%ソルカフロックあるいはFF飼料+5%ペクチンを与えて10週間飼育し, 以下の知見を得た。
1) 胃切除ラットの成長は正常ラットより有意に低下したが, ペクチン摂取により成長低下が有意に改善された。
2) DF摂取により, 胃切除ラットのタンパク質のみかけの消化吸収率が低下したが, 脂肪あるいは灰分のみかけの消化吸収率は変化しなかった。
3) 胃切除ラットではTTが遅延する傾向にあったが, DFはこれを短縮した。
4) 胃切除ラットの小腸組織, 粘膜および筋層湿重量に及ぼすDF摂取の影響は一部を除いて認められなかった。胃切除によって小腸粘膜DNA含量は有意に増加したが, ソルカフロックあるいはペクチンを摂取するとこの増加がさらに増強した。
5) 胃切除ラットの小腸粘膜スクラーゼ活性に及ぼすDFの影響はまったく認められなかった。
6) 胃切除ラットの盲腸組織湿重量はペクチンを摂取したときのみ有意に増加した。
7) 胃切除により結腸筋層湿重量が有意に減少したが, DF摂取によってこの減少が抑制された。結腸粘膜DNA含量はソルカフロックあるいはペクチン摂取によって有意に増加した。
胃切除ラットにおいても正常ラットで観察されるようなDFの生理作用が認められ, 同時に正常ラットではみられない新しいDFの生理作用が明らかになった。さらに, 胃切除後においてもDF摂取による著しい悪影響は認められなかった。

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