日本栄養・食糧学会誌
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腹膜炎ラットにおける中鎖脂肪と長鎖脂肪の吸収と代謝およびカルニチンの影響
林 直樹柏原 典雄柳井 稔川西 悟生山川 満
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1989 年 42 巻 6 号 p. 441-448

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抄録

Wichtermanの盲腸結紮・穿孔法による腹膜炎を作製した後, 壊死盲腸切除・腹腔内洗浄の回復処置を行った。その後, 24時間経過したモデルを腹膜炎I群, 48時間経過したモデルを腹膜炎II群とし, 血液学的検査を行い (実験I), さらに腹膜炎時におけるエネルギー基質としての中鎖脂肪 (MCT) と長鎖脂肪 (LCT) の有用性とカルニチンの及ぼす影響を検討した (実験II)。
実験I
1) 血中総タンパク, アルブミン濃度は両腹膜炎群で低下した。インスリン濃度は腹膜炎I群で高度に上昇した。
2) 両腹膜炎群で血中にエンドトキシンが検出された。また, GOTおよびGPTが著明に上昇し, 肝機能障害が示された。この程度は腹膜炎I群がII群より大きかった。
実験II
1) 腹膜炎I群では, MCTの14CO2 10時間累積回収率は66.3±9.2%であり, LCTは16.5±3.2%であった。MCTの吸収率は87.7±5.1%であり, LCTでは70.0±12.5%と吸収障害を認めた。また, 吸収後のLCTの酸化が低下していた。
2) 腹膜炎II群では, MCTの14CO2 10時間累積回収率は73.9±1.2%であり, LCTでは44.5±4.3%であった。両脂肪の吸収は回復していたが, LCTの酸化は依然として低下していた。
3) したがって, MCTはエネルギー源として, 腹膜炎時に有効であると思われた。
4) 腹膜炎I群にカルニチンを投与すると, LCTの酸化が亢進し, 14CO2 10時間累積回収率は16.5±3.2%から22.6±3.9%に上昇した。
5) 一方, MCTはカルニチン投与により14CO2 10時間累積回収率でみると66.3±9.2%から52.7±11.8%へと酸化の抑制を受け. エネルギーとしての利用は低下した。

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