日本栄養・食糧学会誌
Online ISSN : 1883-2849
Print ISSN : 0287-3516
ISSN-L : 0287-3516
ラットおよびTetrahymena pyyiformis Wを用いた非酵素的褐変カゼインの栄養効果
鈴木 博雄管納 八千代宮武 恵子杉沢 博
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 43 巻 5 号 p. 311-317

詳細
抄録

褐変タンパク試料の褐変化度と栄養価との関係を知るため, 褐変反応の処理条件を変えて調製された褐変カゼインについて, 420nmにおける吸光度, 消化酵素によるin vitro消化率, FDNB反応性リジン量, TPWの増殖量およびラットの体重増加量を指標として比較検討した。
420nmでの吸光度の変化は保存褐変タンパク質試料に比べて加熱褐変試料で大きく, 加熱時間とともに, または, 還元糖の混合比率が高くなるに従って吸光度の上昇を認めた。褐変タンパク質の栄養価の劣化の程度は必ずしも褐変化度に対応せず, トリプシンによる褐変タンパク質の消化率およびTPWの増殖量は, 加熱褐変試料に比べ保存褐変試料でより大きく低下し, この傾向はFDNB反応性リジン量の変化でも確認された。保存褐変タンパク質を含む飼料を投与したラットの成長がほぼ完全に抑制されたのに比べ, 加熱褐変タンパク質投与群の成長の抑制はわずかであった。粉末状態で保存した褐変タンパク質と液体状態で加熱した褐変タンパク質でみられた栄養価の差は褐変物質によるというよりもむしろ有効性リジン量の違いによることが示唆されこのことは褐変タンパク質へのリジンの補足効果からも確かめられた。

著者関連情報
© 社団法人日本栄養・食糧学会
次の記事
feedback
Top