1993 年 46 巻 4 号 p. 345-350
前報に引き続きギンナンを長期間貯蔵する際起こる品質の劣化と成分変化との関連を調べ, 今回はギンナンの主成分であるデンプンと少・単糖類ならびに不揮発性有機酸の変動について検討した。
ギンナンを低温 (5℃), 室温 (20~35℃), 高温 (37℃) の三つの条件下でそれぞれ5月初旬から10月末まで6カ月間貯蔵し, その間2カ月ごとに試料の一部を取り出して測定を行った。その結果, 低温ではフルクトースの少量の減少とショ糖の増加のほか大きな変化はなく, 室温, 高温では硬化の際にフルクトースの増加とショ糖の著しい減少が認められた。また, いずれの条件下の貯蔵でもデンプンの幾分の減少が認められた。これらの成分変化はエネルギーの補給に関連するもので, 構造の変化への大きな関与はないものと考えられる。
また, 7月中旬から10月下旬にかけてのギンナンの成熟過程で, 一般組成, デンプン量, 少・単糖類および有機酸組成の変化を調べた。その結果7月中旬に未熟であったギンナンは8月上旬までの気温の高まる約20日間に急速に成熟し, その後10月にかけてさらデンプン量が増加し, 水分および有機酸が減少して完熟した。