日本栄養・食糧学会誌
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高齢者の基礎代謝量と身体活動量
横関 利子
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1993 年 46 巻 6 号 p. 451-458

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抄録

1) 本研究は老人ホーム入所者 (65~90歳) 男性10名, 女性15名の計25名を対象に, 65~79歳と80歳以上の年齢群の基礎代謝量に及ぼす身体活動量と有酸素的能力の影響を明らかにするとともに, 近年の高齢者の基礎代謝量の時代による変化を検討した。
2) 覚醒時心拍数の平均値および最高値は, 男女とも80歳以上のほうが約10~20拍/分低く, その差は統計的に有意であった。エネルギー消費量も同様に, 男女とも80歳以上のほうが有意に低かった (p<0.05) 。
3) 推定最大酸素摂取量は, 65~79歳の男性では体重当り33.6±7.6ml, 女性27.5±5.8ml, 80歳以上の男性20.4±6.7ml, 女性20.0±4.8mlであり, 男女ともに80歳以上のほうが有意に低かった (p<0.05) 。
4) 体重当り基礎代謝量は, 65~79歳の男性で19.7±2.6kcal, 女性で21.1±4.2kcalであり, 80歳以上の男性は15.7±1.3kcal, 女性は19.2±2.3kcalであった。
5) 基礎代謝量は身体活動量, および推定最大酸素摂取量が高い老ほど高く, それぞれの間にr=0.455, およびr=0.429と有意な (p<0.05) 正の相関関係を示した。
6) 対象者の基礎代謝量とすでに報告されている結果を含めて, 1955年以降高齢者の基礎代謝量は漸減していることが推測された。また, 基礎代謝量は基準値を用いて算出すると男女とも80歳以上で大きく見積もられる。
7) 以上のことから, 高齢者の基礎代謝量の低下を防ぎ, 生活の質を向上させるためには, 日常生活での身体活動量および有酸素的能力を維持・向上させるための対応策の必要性が示唆される。

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