日本栄養・食糧学会誌
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完全水素添加大豆油の摂取がラットの消化吸収および脂質代謝に及ぼす影響
青江 誠一郎小西 寛昭松山 博昭矢作 佐智子杉浦 正幸八尋 政利
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1994 年 47 巻 2 号 p. 101-109

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抄録

大豆油を完全水素添加してトリステアリンを主体とするトリグリセリドを調製した。調製された完全水素添加大豆油 (FH油) の消化吸収性および脂質代謝に及ぼす影響を調べた。AIN-76基本組成の標準飼料ならびにコレステロール0.5%, コール酸ナトリウム0.15%を含む高コレステロール飼料に大豆油20%および大豆油の19%をFH油で置換した飼料をラットに給餌し, 28日間飼育した。飼育終了後, 24時間絶食させて血清ならびに肝臓脂質を分析した。
1) FH油を給餌したラットは大豆油に比して, 定義上の摂取エネルギーが同じにもかかわらず, 体重増加量, 飼料効率および脂肪の量が低かった。
2) FH油の消化吸収性をトリグリセリドの分子種別に調べた結果, いずれの分子種も消化吸収率が著しく低かった。トリグリセリド中のステアリン酸の比率が増すにつれて, 消化吸収率が低くなり, トリステアリンが最も低い消化吸収率であった (0.1~0.2%)。
3) FH油の消化吸収率を脂肪酸別に調べた結果, ステアリン酸の消化吸収率が最も低く, ついでパルミチン酸が低かった。FH油群は, 大豆油由来のオレイン酸およびリノール酸の吸収率も有意に低くなった。
4) 糞中ステロールの分析結果より, FH油群は内因性コレステロールの排泄が増加し, 食餌性コレステロールの吸収も低くなった。また, FH油群は胆汁酸の総排泄量が増加したが, 糞中胆汁酸濃度はむしろ低下した。5) 肝臓脂質の分析結果より, FH油群の肝臓脂質量が低かった。とくに, 食餌性コレステロールの肝臓への蓄積率が著しく低かった。肝臓脂質中の脂肪酸分析の結果より, 飽和脂肪酸を主体とするFH油を摂取しても, そのほとんどが吸収されないことから, 飽和脂肪酸が多く蓄積することはなかった。
6) 標準食下では, FH油群は血清トリグリセリドおよび総コレステロール濃度が低値を示した。高コレステロール食下では, FH油群の血清トリグリセリド濃度が低値を示したが, 血清コレステロール濃度は大豆油群のほうが低くなった。

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