日本栄養・食糧学会誌
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小麦由来α-アミラーゼ阻害物質の抗肥満作用
横田 隆桐原 修大石 一二三谷 久典渡辺 乾二大網 弘
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1994 年 47 巻 5 号 p. 341-348

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抄録

市販の小麦をエタノールで直接抽出し, 限外濾過法を用いて1単位のヒト唾液α-アミラーゼ活性を阻害する力価を1単位として約40,000unit/mgの非拮抗型α-アミラーゼインヒビター (α-AI) を精製した。このα-AIを用いて, in vitroでカルボヒドラーゼに対する阻害活性を測定し, 健常者に対する臨床的効果を検討した。
1) カルボヒドラーゼに対する阻害活性はヒト唾液, 膵液およびマウス膵由来α-アミラーゼを70~90%阻害し, 微生物由来β-アミラーゼ, マルターゼ, インベルターゼを30~50%阻害した。
2) α-AI (30mg) 摂取後の食後血糖値は, α-AI非摂取後の食後血糖値と比較すると, 有意に抑制された。
3) α-AIの血液生化学的検査値に及ぼす影響は食事・運動制限せずにα-AI (30mg/日) を1カ月間摂取させた後で総コレステロール, トリグリセリドおよびアミラーゼが低値を示したが, 他の血液生化学的検査値には変化は認められなかった。
4) α-AIの体重増加抑制効果は食事・運動制限せずにα-AI (30mg/日) の1カ月間摂取で男女ともにBMIで0.3~0.4の減少が認められ, さらに軽度の運動負荷を与えた場合, 有意に体重減少を示し, 男子でBMIが1.5±0.3, 女子で1.3±0.15の減少が認められた。
以上の結果からα-AIはヒト唾液および膵液由来α-アミラーゼを高率に阻害し, 血液生化学的検査値に異常を認めず, 下痢症状等を起こすことなく, 過度の食事制限せずに減量効果が期待できると考えられる。

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