日本栄養・食糧学会誌
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各種グルコン酸のラットにおける消化吸収性と消化管内残存量
浅野 敏彦湯浅 一博吉村 康美竹縄 誠之福場 博保
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1997 年 50 巻 4 号 p. 287-294

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抄録

グルコン酸は遊離の酸の状態 (GA) と無水物であるラクトン体の状態 (GDL) およびナトリウム塩 (GNA), カリウム塩 (GK), カルシウム塩 (GCA) 等の塩を形成した状態が存在する。これらの形態におけるグルコン酸類のラットでの消化管吸収と残存について比較した。
in vitroにおけるヒト唾液, 人工胃液, ブタ膵液パンクレアチンおよびラット小腸粘膜酵素の各種消化液中で, グルコン酸はその形態にかかわらず常に安定であった。
in situでのラット小腸ループでの吸収性試験 (50mg/kg注入) で, 30分後にグルコン酸の塩類は腸管内に100%残存していたのに対して, GDLは45%, GAは86%になり, 形態によって差が見られた。
各種グルコン酸をラットに500mg/kg経口投与し, 30分後の血漿中濃度はグルコン酸塩類はわずか1.7~2.2μg/mlであるのに対してGDLは91μg/ml, GAは38μg/mlとなり, 吸収量に大きな差があった。
各種グルコン酸50mg/kg経口投与後の尿中排泄率は, グルコン酸塩類で0.8~1.5%, GDLで19%, GAで5.5%となった。これに対して, 各種グルコン酸10mg/kg静脈注射後の尿中に排泄される量を測定すると, GNAは87%が尿中に回収されたのに対してGDLは36%, GAは58%の回収率であった。このことから, GDLとGAは経口投与後に血中に吸収されても代謝を受けるため, 尿中には一部しか排泄されないことが示唆された。
無菌ラットを使用して50mg/kg経口投与8時間後の消化管内に残存する量を直接測定すると, GDLは25%, GAは68%, GCAは90%の残存率であった。

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