抄録
亜鉛欠乏状態のマウス精子形成への影響を, 精子の生存率および形態を指標にして検討した。
1) マウスを亜鉛欠乏飼料 (亜鉛含量0.5ppm) で6週間飼育した後に屠殺し, 精巣および精巣上体を摘出した。精子数は, 血球計算盤を用いて算出し, エオジンYとアニリンブルーで精子を生体染色をして, 生存精子を判定した。また, 精子の塗抹標本をエオジンYで染色して精子の形態異常を観察した。
2) 亜鉛欠乏群では, 精子数が対照群のおよそ50%まで減少していた (25.7×106対51.6×106/g)。また, 生存精子の割合も, 有意に減少していた (41.5%対54.5%)。体重増加の少ない個体ほど, 生存精子の割合が低く, かつ精子数が減少している様子が観察された。
3) 亜鉛欠乏群における異常精子の頻度は13.0~44.0%と, 対照群の5.4~22.8%に比べ, すべての部位で増加していた。とくに, 頭部の異常がもっとも顕著で, ついで中片部の屈曲の異常が増加していた。
これらの結果, 亜鉛が正常なマウスの精子形成にとって不可欠であることが示唆された。