日本栄養・食糧学会誌
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ラット門脈血中グルコース濃度の変化を指標としたD-キシロースのα-グルコシダーゼ阻害作用の評価
松浦 寿喜市川 富夫
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1997 年 50 巻 5 号 p. 363-368

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抄録

われわれは, 無麻酔無拘束下で長期間にわたって門脈血を採取できるラット消化吸収実験モデルを用いて, キシロースによる糖質の消化吸収抑制作用およびその作用の持続時間について検討した。
まず, 門脈カテーテル留置ラットの試料注入用カテーテルよりD-キシロースおよびスクロースを投与し, 門脈血中グルコースおよびフルクトース濃度を測定したところ, 門脈血中グルコースおよびフルクトース濃度の上昇はD-キシロース投与5分後から抑制され, とくにフルクトースは強く抑制されることが明らかとなった。さらに, 本実験においてスクロースの場合の2倍量すなわち0.24g/kgのD-キシロースを投与することでマルトースに対しても阻害作用を示すことが明らかとなった。
次に, スクロースを胃内に持続的に投与することで門脈血中グルコース濃度を一定にした門脈カテーテル留置ラットにD-キシロースを投与して, D-キシロースによるスクロースの消化吸収抑制作用の持続時間を測定したところ, 0.12g/kgD-キシロース投与では, 門脈血中グルコースの有意な低下はD-キシロース投与後20分から45分の25分間であったのに比し, 0.24g/kgD-キシロース投与では投与後10分から60分の50分間に延長されるのが観察された。
以上の結果より, 門脈カテーテル留置ラットを用いることによりD-キシロースによるスクロースの消化吸収抑制作用およびその作用持続時間を測定できることが明らかとなった。

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