日本栄養・食糧学会誌
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国民栄養調査のデータ処理過程における過誤とその対策
吉池 信男岩谷 麻有子大谷 八峯井上 浩一河野 美穂清野 富久江松村 康弘山口 百子
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1998 年 51 巻 2 号 p. 57-65

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抄録

国民栄養調査では, 個人別の食品および栄養素摂取量を推定するために, 1995年より世帯全体の摂取量に案分比率の情報を付加する方法を採用した。栄養素摂取量を計算するために, 保健所栄養士は, 回答された食品に対して適切な食品番号を付けること, 目安量で回答された場合には重量に換算すること, 家庭で料理がどのように分けられたかの情報をもとにして, 適切な案分比率を付すことが求められる (保健所コード化過程)。こうしてコード化された調査票は, 都道府県において確認および修正される (都道府県コード修正過程)。このデータ処理過程において, どのような種類の過誤が, どの程度の頻度で発生するか, また, それらが総エネルギーや栄養素摂取量等の計算結果に及ぼす影響について, 系統的な分析を行った。
その結果, 保健所コード化過程では, 食品番号・摂取量の過誤および行全体の抜け落ちについては, 1世帯当り1.61件, 案分比率の過誤については0.19件であった。とくに, 案分比率に関する過誤の頻度に関して, 保健所間のばらつきが大きかった。また都道府県コード修正後には, 過誤の頻度は, それぞれ1.57, 0.16件であり, 十分な修正がなされていなかった。このことは, 現行の手作業によるコード化および確認・修正作業の限界を示唆するものである。
この問題を解決するためには, 調査員である栄養士が, データ入力, 過誤のチェック・修正のためのコンピュータプログラムを, 各地域保健現場において使用することが不可欠であると考えられた。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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