日本栄養・食糧学会誌
Online ISSN : 1883-2849
Print ISSN : 0287-3516
ISSN-L : 0287-3516
血液透析患者の味覚機能低下に及ぼす血中亜鉛・レチノール結合タンパク質ならびに降圧剤の影響
下田 妙子中村 永友藤永 三千代
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 52 巻 1 号 p. 3-11

詳細
抄録
透析患者の味覚感受性に及ぼす要因を探るため, 透析患者に対して味覚テストを施行し, 以下の結果を得た。
1) 透析患者は味覚感受能が低下し, 味覚異常を示す割合も対照群より多かった。
2) 女性は男性より味覚感受性が良かった。喫煙は味覚感受性を低下させ, 喫煙者で降圧剤使用者は一層味覚感受性を低下させることが示唆された。
3) 血漿亜鉛値ば, 48-92μg/dLに分布し, 平均63.1±11.94μg/dLで正常値の下限を示したが, 味覚閾値との統計的有意差は認められなかった。
4) RBP値は, 9.0-16.9μg/dLに分布し, 男性平均12.3±1.88μg/dL, 女性平均12.6±1.49μg/dLで, 標準より低下していた。
5) 血漿亜鉛値と血漿RBP値との間に弱い正の相関が認められた。
6) 味覚異常の原因の一つとして, ACE阻害剤, α遮断薬, β遮断薬などの降圧剤の関与が示唆された。以上の結果から, 透析患者の味覚低下は, 長年の透析による影響と併せて, 降圧剤の関与や血漿亜鉛値およびRBP値の低下による味覚受容機構の変化が関わっているものと考えられた。
著者関連情報
© 社団法人日本栄養・食糧学会
次の記事
feedback
Top