日本栄養・食糧学会誌
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異なる判定方法による甘味識別閾値のマウス系統差およびICR系マウスにおけるショ糖嗜好と閾値との関係
出嶋 靖志一條 優華高坂 宏一
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キーワード: マウス, 甘味, 閾値, 嗜好, 個体差
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2001 年 54 巻 6 号 p. 331-337

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抄録

7系統の雄マウスのショ糖味覚閾値を二瓶選択法で調べた。閾値は, (1) 低濃度ショ糖溶液に対する蒸留水飲水量+SDを基準として, ショ糖溶液飲水量が基準を越える点 (THR・SD) と, (2) ショ糖溶液と蒸留水の飲水量に連続して有意差が生じる最低濃度 (THR・t), の二つの方法で判定した。THR・SDは, ショ糖濃度の変化や系統の違いによって蒸留水飲水量とSDが変動すると値が変わるため, 二瓶選択法による閾値判定には不適当であった。また, 近交系と比べ遺伝的多様性が大きいICR系は, 甘味嗜好が最強のショ糖濃度において嗜好の個体差が最大となり, 甘味嗜好が強い個体は甘味覚が鈍いことがTHR・tによって認められた。この関係は塩味における筆者らの報告とは逆で, 甘味と塩味とでは嗜好と閾値の関係が異なる可能性が示唆された。一方, THR・SDはSDの大小で変動するため嗜好と閾値との関係を検出することができなかった。以上の結果より, 実験動物の甘味閾値を, 個体差の小さい系統内で判定する場合, 個体差の大きい系統内で判定する場合, 異なる系統間で比較する場合, のいずれにおいてもTHR・tが適当であることが示された。

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