日本栄養・食糧学会誌
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高い糖転移能をもつ広基質特異性耐熱性α-グルコシダーゼによるグルコシルトレハロースおよび関連オリゴ糖の合成
活性部位近傍アミノ酸残基置換の影響
岡田 麻希中山 亨野口 秋雄西野 徳三菅 由紀子岩下 孝上田 隆史
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2002 年 55 巻 1 号 p. 19-25

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抄録

好熱性細菌 Bacillus sp. SAM1606株が生産する耐熱性α-グルコシダーゼは, α-グルコシダーゼとしては最も幅広い基質特異性と高い糖転移活性をあわせもつ酵素であり, トレハロースに効率良く作用しうる数少ないα-グルコシダーゼの一つである。本酵素のこのような特徴を生かし, ビフィズス菌の選択的増殖促進作用や抗う蝕作用のある機能性オリゴ糖である6-O-α-グルコシルトレハロースおよび関連オリゴ糖の, 効率の良い酵素的合成を試みた。本酵素を1.32Mトレハロースと60℃, pH6.0で反応させたところ, 三糖類 (6-O-α-グルコシルトレハロース) と四糖類: (6-O-α-イソマルトシルトレハロース) を著量生成し, 本酵素を用いれば, トレハロースを唯一の基質 (グルコシル基供与体ならびに受容体) としてこれらのオリゴ糖を合成できることが示された。また, 活性部位近傍のアミノ酸残基がこの糖転移反応の反応性や特異性に及ぼす影響に関する知見を得るため, 273位のGlyをさまざまなアミノ酸で置換した変異体を作成し, トレハロースと反応させた。その結果, 野生型酵素が最も高いオリゴ糖生成能を示したのに対し, 他のすべてのアミノ酸置換体では糖転移能が減少していた。とくにLys, Arg, His, Phe, Trp, Tyrに置換した変異体は糖転移活性をほぼ完全に失っていた。この結果は, SAM1606α-グルコシダーゼの273位のアミノ酸側鎖の性質がトレハロースとの糖転移反応の反応性に大きな影響を与えていることを示唆している。

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