2002 年 55 巻 6 号 p. 357-360
ラットに脂質を経口投与するとトリプトファンからナイアシンへの転換率が上昇した。その転換率に影響を与える脂質の構造を調べたところ, 炭素数18以上の多価 (一価) 不飽和脂肪酸が影響を与えた。トリプトファン・ナイアシン代謝経路の酵素活性を測定したところ, トリプトファン・ナイアシン代謝経路の鍵酵素α-amino-β-carboxymuconate-ε-semialdehyde decarboxylase [EC4.1.1.45] (ACMSD) の活性を多価不飽和脂肪酸が抑制したことを明らかにした。初代培養肝細胞の実験でも同様の現象が認められた。ACMSDの精製, cDNAのクローニングを行い, ウエスタンブロット分析, ノーザンブロット分析を行ったところ, 多価不飽和脂肪酸摂取によりACMSDの酵素量およびmRNA量が著しく減少し, 血清キノリン酸レベルが上昇することを明らかにした。脂質がトリプトファン代謝系の鍵酵素に転写レベルで影響を与える可能性が示唆された。