抄録
ノリをペプシンで酵素分解して得られるオリゴペプチド (NOP) はアンギオテンシンI変換酵素 (ACE) 阻害活性を有し, 高血圧自然発症ラット (SHR) への単回投与にて血圧低下作用を有することが確認されている。本研究では, NOP中の降圧作用物質の解明とその作用機序について検討した。ノリの酵素分解物 (NOP粗製物) をNOP画分, 透析外液画分 (灰分画分) および透析内液画分 (糖・食物繊維画分) に分画し, それぞれSHRに28日間混餌投与した。その結果, NOP画分にのみ, 有意な血圧上昇抑制作用が確認され, 長期投与における降圧作用がNOPによることが確認された。NOP中のACE阻害ペプチドAla-Lys-Tyr-Ser-Tyr (AKYSY) のSHRへの単回投与における降圧有効投与量は0.2mg/kgであった。一方, NOP粗製物の降圧有効投与量は200mg/kgであり, NOP粗製物200mg中には, 0.135mgのAKYSYが含まれているので, NOPの降圧作用は主にAKYSYによることが示唆された。また, AKYSYを投与することにより, SHRの大動脈および肺のACE活性が低下することが認められた。