2025 年 4 巻 1 号 p. 1-11
目的:足尖の引きずりが時折認められる脳卒中症例に対して装具装着が運動学データや筋シナジーの時空間的パターンの再現性に与える影響を明らかにすることである。
方法:対象は脳卒中片麻痺を呈した70代女性である。快適歩行を装具有無の2条件で実施し、表面筋電図を使用して麻痺側下肢から10歩行周期の筋活動を収集した。非負値行列因子分解を用いて筋シナジーを抽出し、その時空間的パターンについて装具の有無の条件間で比較した。両条件における下肢関節角度と筋シナジーの再現性を比較するため、10歩行周期分の時系列的変化の相互相関値と、筋シナジーの重みづけのコサイン類似度を算出した。
結果:両条件で立脚期と遊脚期に活性化する二種類の筋シナジーが抽出され、両条件間の時空間的パターンの類似度はどちらも高値を示した。下肢関節角度と遊脚期に活動する筋シナジーの時間的パターンの相互相関値は装具無し条件で有意に低かった。さらに、この筋シナジーのコサイン類似度は装具無し条件で有意に低かった。
結論:装具装着が筋シナジーの時空間的パターンの再現性の改善を介して下肢関節運動の再現性の改善に寄与した可能性を示唆する。