2025 年 4 巻 1 号 p. 26-32
目的:本研究の目的は、pusher behavior(PB)を呈した単一事例で、PBの改善と自覚的姿勢垂直位(SPV)の経過との関連性を検証することである。
方法:対象は視床出血後に重度のPBを呈した症例である。調査期間は発症約1カ月後からPBが完全に消失するまでとした。Scale for Contraversive Pushing(SCP)、Burke Lateropulsion Scale(BLS)、Fugl-Meyer Assessmentの下肢運動機能項目(FMA-LE)、下肢の体性感覚、SPVを1週間毎に測定し、各変数間の関連性と改善時期の前後関係を相互相関解析にて検討した。
結果:PBは発症約5カ月後に消失した。SCPとBLSの改善には有意な正の相関、SCPとFMA-LE、BLSとFMA-LEの改善には有意な負の相関を認め、いずれも改善時期の前後関係に乖離を認めなかった。一方、SCPの改善とSPV、BLSの改善とSPVには有意な相関を認めなかった。体性感覚はPB消失時まで脱失のままであった。
結論:本症例においては、PBの改善とSPVの関連性が低いと思われた。