2020 年 32 巻 5 号 p. 881-886
各種代表値指標の中で,ミッドレインジ(Midrange:MR)は,外れ値に弱いという欠点があり,今ではほとんど使われないが,人間が複数の観測値の代表値を直感的に求める時のモデルとしては有力候補の1つである.しかし,MRは最大値と最小値しか利用せず効率が良くないので,少数データに関しては,人間のデータ処理モデルに最適とは言い切れない.本研究は,データ集合をレインジのネスト(入れ子)として扱い,各レインジのMRを一定規準で作成したウェイトで結合した重み付き平均を,新たな代表値指標として提案.4種のモデルの中で,観測データのソーティングが不要なモデルとしてXMR指標を取り上げ,伝統的な代表値指標との関係を,指数乱数によるシミュレーションで調査した.また,調査に似た心理学的実験を試行し,被験者の応答する主観的代表値がどの指標に近いかは個人差が大きいことが示唆された.