知能と情報
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総説論文
模倣の計算理論に向けて:力学的不変量による模倣機序の説明
鳥居 拓馬日髙 昇平
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2021 年 33 巻 2 号 p. 617-629

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抄録

身体模倣は他者の行為から自分の行為を学ぶ社会学習の基礎といえる.模倣に関する仮説はいかにして模倣者が行為の同一性を認識するかの説明を求められる.本論文では,模倣のメカニズムに関する4つの既存の仮説を検討する.著者らが模倣の仮説に要求するひとつの基準は計算機シミュレーションやロボットでの実装可能性である.もし既存の仮説に不備や曖昧な点があれば,その仮説を素直に実装できず,実際に動作するものを作るには追加の前提が必要となる.本論文では,既存の仮説をその実装を試みた研究とともに批判的に検討することで,既存の模倣の仮説がもつ未解決問題や暗黙の前提を明らかにする.加えて,身体環境系を力学系とみなす立場から,力学的不変量に基づく著者らの模倣に関する仮説を簡潔に論じる.既存の仮説が身体姿勢の感覚表現の対応づけを強調するのに対して,著者らの仮説は身体動作の自由度(力学的不変量)の対応づけを強調する.

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© 2021 日本知能情報ファジィ学会
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