雑談対話システムにおいて,ユーザが「システムに理解されている」という印象を持つことは重要である.そのためには,システムは自身がユーザ発話をどのように理解したか(発話理解結果)を伝える必要がある.しかし,発話理解結果の一部には,内容によっては,その伝達が好ましくない場合(例えば,相手を批判する内容や相手のプライバシーに関する内容など)も存在する.本研究では,雑談対話システムにおいて,どのような発話理解結果の伝達が好ましいか,好ましくないかを明らかにするため,発話理解結果を伝達する発話の効果を分析した.具体的には,多様な発話理解結果を伝達するシステム発話を作成し,被験者実験を通じて,どのような種類の発話理解結果であれば,その伝達が好ましいのか,好ましくないのかを調査した.その結果,ユーザの内面に言及する発話理解結果はその伝達が好ましくなく,ユーザの内面以外では,ユーザ自身に言及する発話理解結果はポジティブな極性の内容のものであれば伝達が好ましくなる場合があり,ユーザに関する客観的事実やユーザと無関係な一般的事実は極性によらずその伝達が好ましいということが明らかになった.本研究は,雑談対話システムの発話理解結果において,伝達が好ましいもの,好ましくないものを明らかにする最初の試みであり,得られた知見は今後,自身の理解を伝える雑談対話システムを構築する際の有用な指針になると考えられる.
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