日本口腔インプラント学会誌
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総説
オッセオインテグレーテッドインプラント治療を考える:歴史的背景と口腔外科医が受け入れた理由
髙森 等小倉 晋山田 麻衣子
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2018 年 31 巻 2 号 p. 121-134

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抄録

オッセオインテグレーテッドインプラントが登場する前の歯科インプラント治療はインプラント周囲炎などが頻発し,除去などの対処に追われていた多くの口腔外科医はインプラント治療に対し否定的であった.一方,当時の口腔外科医は,萎縮歯槽堤に対し維持と安定のよい義歯を装着するために歯槽堤形成術を行っていたが,義歯が維持され安定するのに十分な高径と幅径のある歯槽堤を得ることは難しく,しかも早期に後戻りが生じ,効果は限定的であった.

オッセオインテグレーテッドインプラントの概念には当初戸惑いがあったが,数多くのエビデンスのある基礎研究に裏付けられ,創意工夫された器具・器材が揃っており,システマチックに理論づけられた治療術式,適応が広く,優れた臨床成績を示す,などにより口腔外科医も容認するようになった.

その後,術式の簡素化や,オッセオインテグレーションを早期にかつ確実に獲得できるインプラント体や審美性の回復が可能なパーツの開発・販売もあり,日常臨床にも積極的に取り入れられてきた.さらに,上顎洞底挙上術などの適応拡大法も行われるようになり,それにともない手術に関連した数多くのトラブルが発生し社会問題となった.

最近では,手術侵襲が少ないCAD/CAMを利用したガイデッドサージェリーが盛んに行われるようになったが,口腔外科的知識やスキルをもっていてこそ,その利点が生きてくる.トラブルを避けるためにも,臨床の場において教育や指導の面で口腔外科医が果たす役割は大きい.

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