日本口腔インプラント学会誌
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31 巻, 2 号
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総説
  • 髙森 等, 小倉 晋, 山田 麻衣子
    原稿種別: 総説
    2018 年31 巻2 号 p. 121-134
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/07/25
    ジャーナル フリー

    オッセオインテグレーテッドインプラントが登場する前の歯科インプラント治療はインプラント周囲炎などが頻発し,除去などの対処に追われていた多くの口腔外科医はインプラント治療に対し否定的であった.一方,当時の口腔外科医は,萎縮歯槽堤に対し維持と安定のよい義歯を装着するために歯槽堤形成術を行っていたが,義歯が維持され安定するのに十分な高径と幅径のある歯槽堤を得ることは難しく,しかも早期に後戻りが生じ,効果は限定的であった.

    オッセオインテグレーテッドインプラントの概念には当初戸惑いがあったが,数多くのエビデンスのある基礎研究に裏付けられ,創意工夫された器具・器材が揃っており,システマチックに理論づけられた治療術式,適応が広く,優れた臨床成績を示す,などにより口腔外科医も容認するようになった.

    その後,術式の簡素化や,オッセオインテグレーションを早期にかつ確実に獲得できるインプラント体や審美性の回復が可能なパーツの開発・販売もあり,日常臨床にも積極的に取り入れられてきた.さらに,上顎洞底挙上術などの適応拡大法も行われるようになり,それにともない手術に関連した数多くのトラブルが発生し社会問題となった.

    最近では,手術侵襲が少ないCAD/CAMを利用したガイデッドサージェリーが盛んに行われるようになったが,口腔外科的知識やスキルをもっていてこそ,その利点が生きてくる.トラブルを避けるためにも,臨床の場において教育や指導の面で口腔外科医が果たす役割は大きい.

  • 依田 信裕, 小山 重人, 小川 徹, 松舘 芳樹, 重光 竜二, 川田 哲男, 佐々木 啓一
    原稿種別: 総説
    2018 年31 巻2 号 p. 135-143
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/07/25
    ジャーナル フリー

    メカニカルストレスを起因とした骨リモデリング反応は,インプラント周囲骨の経年的な骨吸収や骨密度低下の要因となり得る.したがって,インプラント周囲骨組織を長期的に健全に保全するためには,機能時にインプラントに加わる力とインプラント周囲骨反応との関係を考慮した治療計画立案が肝要となる.

    本稿では,力がインプラント周囲骨に及ぼす影響に関するこれまでの知見について,文献レビューをもとに概説する.また,力と骨反応との関係を本質的に理解するために重要な,機能時に補綴装置を介してインプラントに加わる生体内荷重について,これまで実施されてきたさまざまな測定手法を含め紹介する.さらに,生体内実測荷重値を応用した骨リモデリング解析研究の一端を紹介し,力学的最適化をベースにしたインプラント治療計画システムの将来的な可能性について論じる.

  • 長澤 麻沙子
    原稿種別: 総説
    2018 年31 巻2 号 p. 144-152
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/07/25
    ジャーナル フリー

    近年骨代謝制御メカニズムにおける,免疫受容体による破骨細胞分化制御や免疫系細胞の関与が注目されており,血中の幹細胞の存在も確認されている.一方,局所での破骨細胞の分化誘導および遠隔部位からの誘導メカニズムについての詳細は分かっていない.歯科インプラントの臨床応用では,インプラント表面性状改良等の技術の発展に伴い,オッセオインテグレーションの早期獲得が可能になった.しかしながら,埋入当初に起こる周辺組織反応の詳細はいまだ解明されておらず,臨床成績の更なる向上のために解明すべき課題は多い.骨代謝は骨形成と骨吸収とのバランスで成り立っており,オッセオインテグレーション成立過程における破骨細胞の役割も重要であるはずだが,これについてはほとんど解明されていない.われわれは,埋入当初にインプラント表面に付着した骨髄間質細胞が,その表面性状の違いにより間接的に破骨細胞の増殖・分化に異なった影響を及ぼす,という仮説を立てた.ラットの骨髄から採取した骨髄間質細胞と表面性状の異なる純チタンプレート,および骨髄由来マクロファージを用いた実験の結果,純チタンの表面性状の違いは骨髄間質細胞の発現型を変化させ,間接的に破骨細胞の増殖・分化に影響を与えることが明らかとなった.また,同時に行ったin vivo実験においても同様の結果が得られた.本稿ではこれら研究の概要を紹介し,今後の議論に繋がることを期待したい.

原著(基礎研究)
  • 下出 輝, 梶本 忠保, 山添 光芳, 堀田 正人
    原稿種別: 原著(基礎研究)
    2018 年31 巻2 号 p. 153-161
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/07/25
    ジャーナル フリー

    超音波による物理療法は,少ない侵襲で高い効果が得られる治療方法として注目されている.その中でも出力が小さく,刺激の少ない低出力パルス超音波(low-intensity pulsed ultrasound:LIPUS)照射は創傷治癒の促進や難治性骨折の治療,インプラント埋入後の組織再生に活用されている.

    LIPUS照射が骨分化,骨再生に及ぼす影響については先行研究において細胞レベルで報告がなされているが,骨と同じように機械的ストレスを受ける筋肉に対するLIPUS照射の影響はほとんど検討されていない.そこで,本研究は筋細胞の分化に対するLIPUS照射の影響を調べるために,in vitroで筋細胞に分化することができるマウスC2C12細胞にLIPUS照射が与える影響について検討した.

    その結果,3MHzの周波数のLIPUS照射では90mW/cm2まで出力を上げても細胞障害性はなかった.さらに,3MHzの周波数,出力70mW/cm2,15分間のLIPUS照射はC2C12細胞(筋芽細胞)が筋細胞に分化する過程を促進し,1日1回の照射は7日間連日1回照射した場合と効果は変わらなかった.

    これらのことからLIPUS照射には筋分化促進作用があることが示唆された.

症例報告
  • 寺本 祐二, 上原 忍, 安永 能周, 吉村 伸彦, 西牧 史洋, 相澤 仁志, 小山 吉人, 鈴木 大介, 髙本 愛, 高見澤 一伸, 山 ...
    原稿種別: 症例報告
    2018 年31 巻2 号 p. 162-169
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/07/25
    ジャーナル フリー

    薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)は,ひとたび発症するとその治療には難渋し,患者は苦痛と重篤な機能障害を伴う.今回われわれは,下顎骨広範囲に発生したMRONJに対して外科的切除および顎骨再建を行い,さらに歯科インプラントによる咬合再建にて良好な結果を得ることができた1例を報告する.

    患者は73歳の女性.現病歴として2011年3月,近歯科医院にて34の歯周炎の診断の下,抜歯術が施行された.同年10月,同抜歯窩の疼痛を自覚して治療医を受診したところ,当科紹介来院となった.既往歴に右乳癌で乳腺切除術,リンパ節郭清術,化学療法としてドセタキセル水和物,ゾレドロン酸水和物の静脈投与,カペシタビンの内服投与を受けた.急速に広がっている骨壊死範囲の所見から保存的加療は困難と判断し,外科的治療を計画した.2012年7月に下顎骨区域切除,血管柄付き腓骨皮弁による顎骨再建を施行し,術後の経過は良好で,2013年5月に歯科インプラント埋入術を施行した.その後,二次手術と口腔前庭拡張術を施行し,2014年12月に可撤式の上部構造を装着し,患者の高い満足を得ることができた.

    今回,MRONJに対して外科的治療を選択し,歯科インプラントで咬合を再建する有用性が示唆された.

調査・統計・資料
  • 森永 太, 伊東 隆利, 阿部 成善, 添島 義樹, 土屋 直行, 松井 孝道, 飯島 俊一, 川口 和子
    原稿種別: 調査・統計・資料
    2018 年31 巻2 号 p. 170-179
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/07/25
    ジャーナル フリー

    長期症例のインプラントに対して,しばしばインプラントの残存率が一つの成功基準として使用される.しかし,患者の実態を知るにはそれだけでは十分といえない.この研究の目的はインプラント治療を受けた患者の長期経過の実態を知ることである.我々は,インプラント治療後20年以上経過した患者に対しアンケート調査を行った.患者は九州インプラント研究会に所属する歯科医師によって治療された.アンケートは1,168名に送付し509名からの回答を得た(回答率44%).回答者の内,78%がインプラントに何も問題ないと答えた.また,歯の経過については68%が何もないと回答した.食事については84%が何でもよく噛めると回答した.また93%がインプラント治療に満足していると回答した.

委員会報告
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