2018 年 31 巻 2 号 p. 144-152
近年骨代謝制御メカニズムにおける,免疫受容体による破骨細胞分化制御や免疫系細胞の関与が注目されており,血中の幹細胞の存在も確認されている.一方,局所での破骨細胞の分化誘導および遠隔部位からの誘導メカニズムについての詳細は分かっていない.歯科インプラントの臨床応用では,インプラント表面性状改良等の技術の発展に伴い,オッセオインテグレーションの早期獲得が可能になった.しかしながら,埋入当初に起こる周辺組織反応の詳細はいまだ解明されておらず,臨床成績の更なる向上のために解明すべき課題は多い.骨代謝は骨形成と骨吸収とのバランスで成り立っており,オッセオインテグレーション成立過程における破骨細胞の役割も重要であるはずだが,これについてはほとんど解明されていない.われわれは,埋入当初にインプラント表面に付着した骨髄間質細胞が,その表面性状の違いにより間接的に破骨細胞の増殖・分化に異なった影響を及ぼす,という仮説を立てた.ラットの骨髄から採取した骨髄間質細胞と表面性状の異なる純チタンプレート,および骨髄由来マクロファージを用いた実験の結果,純チタンの表面性状の違いは骨髄間質細胞の発現型を変化させ,間接的に破骨細胞の増殖・分化に影響を与えることが明らかとなった.また,同時に行ったin vivo実験においても同様の結果が得られた.本稿ではこれら研究の概要を紹介し,今後の議論に繋がることを期待したい.