2018 年 31 巻 2 号 p. 153-161
超音波による物理療法は,少ない侵襲で高い効果が得られる治療方法として注目されている.その中でも出力が小さく,刺激の少ない低出力パルス超音波(low-intensity pulsed ultrasound:LIPUS)照射は創傷治癒の促進や難治性骨折の治療,インプラント埋入後の組織再生に活用されている.
LIPUS照射が骨分化,骨再生に及ぼす影響については先行研究において細胞レベルで報告がなされているが,骨と同じように機械的ストレスを受ける筋肉に対するLIPUS照射の影響はほとんど検討されていない.そこで,本研究は筋細胞の分化に対するLIPUS照射の影響を調べるために,in vitroで筋細胞に分化することができるマウスC2C12細胞にLIPUS照射が与える影響について検討した.
その結果,3MHzの周波数のLIPUS照射では90mW/cm2まで出力を上げても細胞障害性はなかった.さらに,3MHzの周波数,出力70mW/cm2,15分間のLIPUS照射はC2C12細胞(筋芽細胞)が筋細胞に分化する過程を促進し,1日1回の照射は7日間連日1回照射した場合と効果は変わらなかった.
これらのことからLIPUS照射には筋分化促進作用があることが示唆された.