2018 年 31 巻 4 号 p. 330-337
目的:偶発症が生じた場合,上部構造体の撤去に苦労する.そこで放電加工によりボックス型スロットを製作し,セメントタイプ上部構造体の撤去方法を新たに考案した.その評価として仮着用セメントによる合着力と可撤用ツールとの関係,さらにはセメント皮膜厚さについて検討したので報告する.
方法:インプラント上部構造体のメタルフレームとアバットメント間に,放電加工装置を用いて型彫り加工を施しボックス型スロットを製作した.加工終了後,仮着用セメントにて合着し,スロット内に18°と24°の角度を有する2種類の可撤用ツールをそれぞれ挿入し,インプラント上部構造がアバットメントから離脱が可能であるか試みた.同時にセメント合着力を測定し,セメント皮膜測定後,多重比較検定を行った.
結果:可撤用ツールを比較すると角度の大きな24°は18°に比較して撤去が容易でt検定では相互間に有意差(p<0.01)が認められた.セメント皮膜厚さの最小値はTBで最大値はTHであった.テンプボンドとテンパックの2項目間においてのみ有意差(p>0.01)は認められなかった.
結論:この撤去方法は放電加工技術の歯科技工への応用範囲を広め,セメントタイプ上部構造体の新たな撤去方法として認識できた.この方法を用いた場合,臨床的にはインプルーブとフジテンプが理想的な仮着用セメントであると考えられた.