2019 年 32 巻 1 号 p. 43-47
目的:今回,われわれは上顎臼歯部の補綴様式の違いが下顎皮質骨の厚みに与える影響について,コンピュータ診断支援システムを用いて調査し,若干の知見を得たので報告する.
対象および方法:対象としては研究所所属の2施設において,2017年1月までに本研究に同意を得た45歳から90歳の平均年齢67.4歳の90名の女性となった.対象となった補綴物は,上顎臼歯部には片側ごとに135例の固定式補綴物,22例の可撤式補綴物であった.固定式補綴物の135例は,下顎臼歯部が56例の固定式補綴物,79例のインプラント支持補綴装置であった.それに対し22例の可撤式補綴物は,下顎臼歯部が18例の固定式補綴物,インプラント支持補綴装置は4例であった.なお問診にて骨粗鬆症あるいはビスフォスフォネート投薬中の患者は除外した.方法としては,上顎の片側ごとの補綴様式の違いに対する下顎下縁の皮質骨の厚さ(mandibular cortical width,以後MCW)をパノラマエックス線写真上でコンピュータ診断支援システム(Computer-aided Diagnostic System:CAD) PanoSCOPE®を用いて計測した.
結果:上顎が固定式補綴物の平均MCWは3.70 mm,可撤式補綴物の平均MCWが3.14 mmを示し,いずれも年齢とともに減少した.上顎臼歯部が固定式補綴物の平均MCWは固定式補綴物では3.84 mm,インプラント支持補綴装置では3.63 mmであり,いずれも年齢とともに減少していた.上顎臼歯部の補綴様式別のMCWでは,上顎臼歯部に135例の固定式補綴物のMCWは年齢とともに減少を示した.22例の可撤式補綴物のMCWは固定式補綴物と同様に年齢とともに減少を示した.
結論:上顎に可撤式補綴物より固定式補綴物を装着している症例で,MCWが維持されていたことから,咬合力がMCWに影響を与えていたことが示唆された.