2019 年 32 巻 1 号 p. 48-56
目的:本邦では,上顎無歯顎症例において,4本のインプラント体を埋入し,即時荷重を行うAll-on-4 conceptに基づく治療に関する報告は少ない.本研究の目的は,上顎にAll-on-4 conceptに基づく治療を行い,上部補綴装置装着後3年以上経過した症例を評価することである.
材料および方法:対象はAll-on-4 conceptに基づき咬合再構成を行った150例,662本である.1症例あたりの埋入本数,インプラント体の種類,長さ,埋入時の初期固定値,埋入部位,既往歴,喫煙習慣の有無について調査し,インプラント体の脱落に関与する要因を検討した.
結果:インプラント体の脱落は17本に認められ,残存率は97.4%であった.埋入部位別では,左側後方傾斜埋入部位は右側前方埋入部位と比較し,有意に低い残存率であった.喫煙者は非喫煙者と比較し,有意に低い残存率であった.
結論:All-on-4 conceptに基づいた治療は高いインプラント残存率を示し,臼歯部の残存歯槽骨量の少ない上顎無歯顎症例に対して,有効な治療方法の一つであることが示唆された.