2019 年 32 巻 1 号 p. 57-64
インプラントは有歯顎の補綴装置製作に比べ,より精度の高い印象採得が不可欠である.また,近年CAD/CAM等でフレームを一塊として製作することが可能になり,上部構造の精度に印象が与える影響が大きく正確な印象採得が必須となっている.今回われわれはインプラントの補綴装置製作にあたって,精度の高い印象を採得することを目的にエックス線を用いたインプラント印象採得時の誤差を検討した.エックス線による確認をした際にどのような条件で誤認が発現するのか検討するため,印象用コーピング─インプラント体間に厚さ10μm~100μmのセルロイドストリップスを挟み込んだものと,間隙なしのものをそれぞれプラットホームに対し水平方向から0度~25度の傾きで照射した.デジタルエックス線装置はCCDとIPを用い,撮影したエックス線写真を複数の歯科医師が無作為に間隙の有無を診断した.結果として,描出限界はIPよりもCCDのほうが優れていた.照射角度をつけた場合,IPでは5度を超えると間隙を認識できる者の割合に差が出はじめ,10度以上の角度になると誤認識者の割合が増加していた.CCDでは10度を超えると値に差が出はじめたが,15度以内からの照射であれば誤認識者の割合に大きな変化は認められなかった.インプラント印象採得時,エックス線を用いて印象用コーピングの適合を確認する際,インジケーター等を用い照射角度をプラットホームに対し水平方向から適切にエックス線を照射すべきである.