2020 年 33 巻 2 号 p. 202-212
目的:日本の開業歯科医院で治療に用いられた歯科インプラント体の破折の頻度についての報告は少ない.本研究では, 九州地区10カ所の歯科医院で埋入されたインプラント体の破折の頻度とその要因を評価した.
材料および方法:福岡口腔インプラント研究会会員の10施設において,2018年3月までにインプラント治療が終了した患者数,埋入されたインプラント体数,および破折したインプラント体数を調査した.
結果:10施設の4,392名の患者に埋入された9,814本のインプラント体が評価された.インプラント体の破折は16名の患者(男性6名,女性10名;平均年齢69.4歳)の17本(0.17%)で観察された.破折インプラント体の部位は上顎8本,下顎が9本,大臼歯部12本,小臼歯部4本,犬歯部が1本であった.破折インプラント体のうち9本は単独冠,5本は連結冠を支持し,3本はオーバーデンチャーの支台であった.16本はプラットフォーム部で破折し,そのうち14本は縦破折で,1本のみがスレッド部で水平に破折していた.14本はインプラント体辺縁の骨吸収を認めたが,3本は画像が不鮮明で評価できなかった.破折したインプラント体は平均72.3カ月機能していた.
結論:臼歯部にインプラント体を埋入する際は,インプラント体のサイズ,アバットメントとの連結様式,使用された材料およびブラキシズムのような患者関連の因子を考慮して選択する必要がある.