2021 年 34 巻 1 号 p. 18-25
従来の支持系にインプラントを加えて義歯の安定を図るインプラントデンチャー治療が超高齢社会の進展に向けて見直されている.外科的侵襲が少なく,清掃性や審美生に優れるといった利点に加え,変化への対応が容易であることは,将来的に自立度の低下を招く可能性がある高齢患者に非常に適したインプラント治療法と認識できる.特に2本のインプラントで支持された下顎のオーバーデンチャー(2-IOD)は,非常に高い成功率に加えて,高齢患者のQoLを大幅に向上できることから,無歯顎治療の第一選択肢となりえ,機能回復,患者満足度,コスト,治療に要する時間などから,信頼性と有効性が非常に高い治療法であることが示されている.
一方,わが国では無歯顎より部分欠損歯列が多くなることが将来推計されている.したがって,パーシャルデンチャーによる健全歯列への回復と長期保持が今後の欠損補綴の重要な役割と考えられる.インプラントの強固な支持能力を利用するインプラントパーシャルデンチャー(IRPD)は,従来のパーシャルデンチャーの安定性や機能を一変させる有効な治療法であり,健康寿命の延伸に不可欠な診療オプションになると期待される.
本稿では文献レビューと著者自身が行ってきたインプラントデンチャーの予後を振り返りながら,安全で確実なインプラントデンチャーを長期に機能させるための基本的な考え方を整理する.