日本口腔インプラント学会誌
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症例報告
歯科インプラント体を矯正のためのアンカーとして顎矯正治療と補綴治療を行った1例の長期予後
岡部 千香夫山本 勝己森永 健三北園 俊司西 耕作松浦 明城戸 寛史松浦 正朗
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2021 年 34 巻 4 号 p. 286-293

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抄録

緒言:多数歯欠損を有する顎変形症患者では,インプラント治療のみで適切な咬合回復は困難である.このような症例には矯正歯科,口腔外科および口腔インプラント専門医による集学的治療を実施する必要がある.また,大臼歯が欠損している場合は歯をアンカーとして使用できないため,歯科インプラントあるいは矯正用アンカースクリューによるアンカーを設置する必要がある.

治療の概要:49歳,女性.患者は顎変形症を有し,さらに上顎前歯,左側第一小臼歯および下顎右側大臼歯が欠損していた.矯正用アンカーとして使用する下顎右側第二大臼歯部に埋入するインプラント体の位置は,矯正用のセットアップ模型に診断用ワックスアップを行い,顎矯正治療後の位置を予測してインプラント体を埋入し,下顎の歯列矯正を行った.次いで上下顎同時移動術を行い,術後矯正後に第一大臼歯部にインプラント体を追加埋入し,上部構造を製作した.上顎は歯槽突起が菲薄で骨移植の必要があり,患者は経済的理由で上顎のインプラント治療を拒否したため,可撤性部分床義歯を装着した.

結果:2008年5月に治療が終了し,その後の顎位は安定し,2020年12月の時点で経過は良好であった.

結論:大臼歯部に埋入したインプラント体を術前矯正治療のアンカーとして使用する方法は,有用であると示唆された.

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© 2021 公益社団法人日本口腔インプラント学会
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