2022 年 35 巻 3 号 p. 222-230
目的:本多施設共同研究の目的は,インプラントオーバーデンチャー(以下IOD)で治療された下顎無歯顎患者でのインプラント体の残存率,インプラント体辺縁骨吸収,および経過観察期間中のトラブルなどを分析することとした.
材料および方法:福岡口腔インプラント研究会会員の8施設において,2019年3月までに治療が終了した下顎のIOD 64例(インプラント体183本)を分析対象とした.64例の経過観察期間は平均8.7±4.0年であった.使用されたアタッチメントはロケーターが32例,バー15例,マグネット7例,ボールが10例であった.
結果:インプラント体喪失は6例の10本(5.5%)で起こり,喪失例に使われたアタッチメントはロケーターが4例(6本),マグネット,およびボールが各1例(計4本)で,バーの症例に喪失例はなかった.インプラント周囲の骨吸収は52例の156本で測定された.骨吸収量は全観察期間を通して大部分で0~2 mmであったが,5年を超えて15年までの期間の110本では5本が3 mmを超えた骨吸収を示した.しかし,16年以上経過した14本では3 mmを超える骨吸収はみられなかった.メインテナンス中の補綴的不具合として,ロケーターではリテンションディスクの交換,バーではクリップの交換が多く,その他,義歯のリライン,破折はすべてのアタッチメントで少数みられた.
結論:多くの症例でIODは長期間安定していた.