2024 年 37 巻 2 号 p. 128-134
目的:インプラント体の残存率を向上させるためには,インプラント埋入前からの徹底したプラークコントロールが重要であると考える.
本研究の目的は,インプラント治療を希望する患者に対して,歯垢染色後,手鏡を用いた群(T群)と,口腔内スキャナーを用いた群(I群)に区別し,O'Learyのプラークコントロールレコード(PCR)を計測,減少率の比較検討を行うこととした.材料および方法:インプラント治療を希望している患者40名に対して,抜歯後1か月,2か月,3か月に歯垢染色とブラッシング指導を行った.抜歯後1か月のPCRをP1,3か月のPCRをP2と設定し,P2からP1を引いた数値を各群の減少率とした.対象部位は歯列全体と,全体を上顎右側臼歯部,上顎前歯部,上顎左側臼歯部,下顎右側臼歯部,下顎前歯部,下顎左側臼歯部の6ブロックに区別,また性別,唇頰側と舌口蓋側に区別し,PCRの減少率の比較を行った.
結果:T群の口腔内全体の減少率は14.8±7.3%で,I群では26.5±13.5%であり,2群間に有意差を認めた.また全体のブロック別では,上顎左側臼歯部,下顎右側臼歯部,下顎前歯部,下顎左側臼歯部に有意差を認めた.性別による減少率では,両群に有意差は認めなかった.また両群の舌口蓋側に有意差を認めた.
結論:本研究結果から,ブラッシング指導における口腔内スキャナーの有用性が示唆された.このことは良好な口腔内環境をもたらし,インプラント周囲炎の予防につながる可能性がある.