2025 年 38 巻 3 号 p. 173-178
オッセオインテグレーションにより咀嚼荷重を骨組織で直接支持するインプラント体においては,インプラント周囲骨組織の荷重応答,すなわちメカノバイオロジーの理解がきわめて重要となる.
我々の研究グループでのこれまでの研究結果から,実験動物に埋入されたインプラント体への繰り返し荷重の負荷により,荷重応答性に骨量の変化がもたらされるとともに,その変化は,顎骨と長管骨では異なることも明らかとなった.さらに骨量だけでなく,コラーゲン線維,生体アパタイト結晶の配向性,ならびにメカノセンサーの中心的役割を担う骨細胞などで構成される骨質が,荷重方向に相関して適応変化することが見いだされた.すなわちスカラー量としての骨量のメカノバイオロジーから,荷重というベクトル量に呼応する骨質のメカノバイオロジーへの展開が図られている.
本稿では,研究結果が示すインプラント周囲骨のメカノバイオロジーの一端を示すとともに,骨質のメカノバイオロジーを基盤とした,骨質制御インプラントデザインの開発,インプラント早期荷重の科学,そして骨質制御がもたらすインプラント周囲炎への新機軸について紹介する.