抄録
われわれは慢性腎不全を有する進行舌癌患者に対して浅側頭動脈と後頭動脈よりの超選択的動注化学放射線療法を施行したので報告する。
64歳の女性は舌の潰瘍を主訴に当科を受診した。患者は慢性腎不全に罹患しており,週3回の血液透析を受けていた。病変は45×40mmであり,弾性硬であった。生検を施行したところ扁平上皮癌と診断された。浅側頭動脈と後頭動脈よりの超選択的動注法を用いた連日同時放射線化学療法(シスプラチン(5mg/m2/day, total 125mg/m2),ドセタキセル(10mg/m2/week, total 50mg/m2),外照射:2Gy/日,計50Gy)を5週間行った。治療経過は問題なく,治療後16か月経過した現在,再発・転移なく経過良好である。
本法は慢性腎不全を有する口腔癌患者に対する有効な治療法の1つになると考えられた。