抄録
腺扁平上皮癌は口腔領域ではまれな悪性腫瘍である。われわれは下顎歯肉腺扁平上皮癌の1例を経験した。症例は74歳男性。2009年1月初旬,左側下顎歯肉の疼痛と摂食障害を主訴に当科初診。初診時,左側下顎歯肉に55×25mm,弾性軟,暗紫色で易出血性の腫瘤を認めた。また左側オトガイ部に知覚鈍麻を認めた。CT画像では下顎管に達する骨吸収を認めた。頸部超音波検査で2個の左側顎下リンパ節に転移が疑われた。生検組織では扁平上皮癌の要素と,ジアスターゼ処理PAS染色にて粘液産生細胞を認める腺癌要素が見られた。以上より,左側下顎歯肉腺扁平上皮癌(T4N2bM0)と診断した。既往の間質性肺炎の状況から手術が困難であることと本人の希望により,根治的放射線化学療法としてUFT内服と放射線外照射を施行した。その後,両肺野,腹部と腋下部の皮膚に多発遠隔転移を認めた。4月末日呼吸状態悪化により永眠した。