2012 年 24 巻 3 号 p. 77-87
われわれは舌扁平上皮癌(舌癌)の周囲間質への浸潤様式の多様性を明らかにする目的で,連続薄切標本を用いた三次元病理形態解析を試みている。組織立体構築の基本操作として,組織アレイ法による癌浸潤先端部の試料採取と免疫組織化学を組み合わせることにより,連続組織画像から腫瘍実質と間質を分画した上で三次元表示する。立体構築した組織空間における舌癌の三次元浸潤様式としては,間質を圧迫するように増生する結節・圧迫型から間質中に多数の孤立癌胞巣が発生している分離・分散型まで多様な特徴が捉えられた。病理組織所見に基づく悪性度評価では,光顕所見で独立した索状あるいは島状の微小浸潤胞巣が組織空間では互いに連結した胞巣構造を維持していることに留意する必要がある。同時に,舌癌浸潤先端部では癌細胞単位での微小浸潤胞巣が多数発生していることから,三次元病理診断は舌癌浸潤能を評価するうえで不可欠であると考えている。