日本口腔腫瘍学会誌
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24 巻, 3 号
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第30回日本口腔腫瘍学会学術大会
シンポジウム:「口腔癌の浸潤:マクロ・ミクロ・モレキュラー」
  • 出雲 俊之
    2012 年 24 巻 3 号 p. 63
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
  • 出雲 俊之, 柳下 寿郎, 八木原 一博
    2012 年 24 巻 3 号 p. 64-76
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    粘膜癌において,予後を左右する最も大きな因子はリンパ節転移だが,予後やリンパ節転移に相関する原発巣の因子としては,深達度と浸潤様式が重要である。口腔癌取扱い規約の臨床型分類には発育様式分類が用いられているが,これは従来からあった臨床視診型分類を基盤として,「分けることができて,分けることに意味のある分類」とのコンセプトのもとに,普遍性・再現性のある表在型・外向型・内向型の3型に再編したものである。現在この臨床発育様式分類については,内向型の中に特に予後不良な一群があり,肉眼像,組織像,病態などを踏まえた1病型としうるか否かが検討されている。この仕事は学術委員会WG1において進めていく予定であるので,ここでは次世代の臨床型分類として,浸潤様式を反映した新分類について解説する。
    私は,臨床型分類は浸潤様式を反映した分類にversion upされるべきであると考えている。外科病理学的仕事の進んだ消化管癌では,シルエット分類が臨床型分類として用いられているが,これは粘膜面の形態と浸潤様式を組み合わせた分類である。口腔扁平上皮癌で悪性度分類として使われている浸潤様式分類(YK分類)は,実はこのシルエット分類に相当し,次代の臨床型分類となりうるものと考えられる。肉眼所見や画像所見は目で見るものではなく,外科病理学的な知識を織り込んで読むものであり,臨床型分類とは,口腔癌に対する全ての知見の集大成としてあるべきものであろう。
  • 島津 徳人, 工藤 朝雄, 田谷 雄二, 佐藤 かおり, 柳下 寿郎, 出雲 俊之, 青葉 孝昭
    2012 年 24 巻 3 号 p. 77-87
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    われわれは舌扁平上皮癌(舌癌)の周囲間質への浸潤様式の多様性を明らかにする目的で,連続薄切標本を用いた三次元病理形態解析を試みている。組織立体構築の基本操作として,組織アレイ法による癌浸潤先端部の試料採取と免疫組織化学を組み合わせることにより,連続組織画像から腫瘍実質と間質を分画した上で三次元表示する。立体構築した組織空間における舌癌の三次元浸潤様式としては,間質を圧迫するように増生する結節・圧迫型から間質中に多数の孤立癌胞巣が発生している分離・分散型まで多様な特徴が捉えられた。病理組織所見に基づく悪性度評価では,光顕所見で独立した索状あるいは島状の微小浸潤胞巣が組織空間では互いに連結した胞巣構造を維持していることに留意する必要がある。同時に,舌癌浸潤先端部では癌細胞単位での微小浸潤胞巣が多数発生していることから,三次元病理診断は舌癌浸潤能を評価するうえで不可欠であると考えている。
  • 樋田 京子, 秋山 廣輔, 大賀 則孝, 間石 奈湖
    2012 年 24 巻 3 号 p. 88-94
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    腫瘍血管新生はがんの浸潤転移に深く関与していることは広く理解されている。がん組織を養う血管を標的とし,がんを兵糧攻めにできる血管新生阻害療法は全てのがんに共通する血管新生を標的としているため,多くの癌腫で抗癌剤との併用で上乗せ効果が認められており,がんの新しい治療法として近年注目されている。本法の標的である腫瘍血管内皮細胞に関して,この血管新生阻害療法が提唱された当時には,「血管内皮は遺伝学的に安定な正常細胞であるので薬剤抵抗性を獲得しないはずである。」と考えられてきた。しかし近年,本治療法に対しても薬剤耐性などの問題点があることがわかってきた。腫瘍血管内皮細胞は正常血管内皮細胞と比較して特異的な遺伝子の発現が亢進していること,サイトカインや薬剤への感受性が異なること,高い生存能と遊走能を有するなどの特徴がある。さらに腫瘍血管内皮の一部には,染色体異常があることも知られてきた。腫瘍血管内皮細胞の特性を理解することは,腫瘍血管新生のメカニズムの解明,癌の浸潤・転移の新たな制御をめざす,新規血管新生阻害療法の開発に寄与するものと期待される。
    本章では,われわれの研究を含め癌の悪性化に関わる腫瘍血管内皮細胞の特異性を中心に,最近の研究結果を概説する。
  • 本田 一文, 馬木 智子, 三浦 奈美, 宮永 晃彦, 増田 万里, 渡辺 隆文, 渡部 幸央, 山田 哲司
    2012 年 24 巻 3 号 p. 95-101
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    がん臨床において転移は重要な予後因子のひとつである。分子レベルでの転移機構の解明が望まれている。転移には細胞の運動能が深く関わっており,細胞運動を制御する因子のひとつとしてアクチン細胞骨格のダイナミックな変化があげられる。われわれはアクチン線維を束状化するアクチニン-4(actinin-4, 遺伝子名:ACTN4)を単離し,本分子の発現が細胞突起形成と運動能亢進に関与することを明らかにしてきた。臨床病理学的には,アクチニン-4タンパク質の発現の上昇が浸潤性乳管がんの予後を規定するだけでなく,大腸がんのリンパ節転移にも相関した。肺小細胞がんからはがん精巣抗原として新規スプライスバリアントが単離され,診断マーカーとしての応用も考えられている。また最近では,actinin-4タンパク質の増加がACTN4の遺伝子増幅に起因することが明らかになり,ACTN4遺伝子増幅が卵巣がん,膵がんの症例で認められている。本総説では,がん転移・浸潤に対するアクチニン-4の生物学的役割について述べる。
原著
  • 吉田 祥子, 岸本 晃治, 伊原木 聰一郎, 銅前 昇平, 吉岡 徳枝, 志茂 剛, 西山 明慶, 目瀬 浩, 佐々木 朗
    2012 年 24 巻 3 号 p. 103-111
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    我が国では高齢化社会が進んでおり,それとともに高齢口腔癌患者を治療する機会の増加が予想される。本研究では,2000年から2008年に当科を受診した後期高齢者口腔扁平上皮癌症例64例(男性23例,女性41例)について,前期高齢者60例(男性32例,女性28例)および若壮年者63例(男性46例,女性17例)と比較検討した。
    後期高齢者は前期高齢者や若壮年者と比較してPerformance Status (PS) grade 0・1の症例の割合が有意に低かった。後期高齢者は,根治的治療45例(70.3%),姑息的治療9例(14.1%),無治療10例(15.6%)であった。後期高齢者は前期高齢者と比較して根治的治療を選択している割合が低い傾向を示した。また,根治的治療を選択した症例の5年疾患特異的累積生存率は後期高齢者81.3%,前期高齢者88.6%,若壮年者80.9%で後期高齢者は前期高齢者と比較して低い傾向を示した。無治療症例は,その後の経過が追えておらず,今後,対策が必要と考えられた。
症例報告
  • 新美 奏恵, 新垣 晋, 中里 隆之, 程 珺, 西山 秀昌, 齊藤 力
    2012 年 24 巻 3 号 p. 113-120
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    筋上皮癌は1991年にWHOによって独立した腫瘍として分類されたまれな唾液腺悪性腫瘍で,その発生頻度は全唾液腺腫瘍の1%未満とされている。そのうち約75%は耳下腺,約10%は顎下腺由来とされており,舌下腺由来の報告はない。今回われわれは舌下腺に発生した筋上皮癌の一例を経験したので報告する。
    患者は67歳の男性で,左口底部の腫脹を主訴に2006年1月に当科を初診した。左側口底部粘膜下に大きさ30×20×10mmの弾性硬の腫瘤を認め,腫瘤の可動性は不良であったが,被覆粘膜には潰瘍は認めなかった。MR画像ではT1強調画像で類球形で内部が不均一な腫瘤を認めた。下顎骨への浸潤像は認めなかった。切除した腫瘍は分葉状で舌下腺内から周囲組織に浸潤増殖していた。免疫組織化学的検査ではS-100蛋白,SMA,pan-keratin,CK19,MUC-I,Calponin,Vimentin陽性を示し,筋上皮癌の診断であった。術後2年9か月経過した現在腫瘍の再発や所属リンパ節への転移,遠隔転移は認められない。
  • 武田 幸彦, 岡本 祐一, 佐藤 英明, 天内 孝昌, 二宮 一智, 又賀 泉
    2012 年 24 巻 3 号 p. 121-127
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    象牙質形成性幻影細胞腫(Dentinogenic ghost cell tumor:以下DGCT)は以前には石灰化歯原性嚢胞の充実型と呼ばれていたが,新WHO分類で嚢胞状の形態を示す石灰化嚢胞性歯原性腫瘍(calcifying cystic odontogenic tumor:以下CCOT)と充実性に増殖するDGCTの2型に分けられた。
    今回右側上顎に発症したDGCTの1例を経験した。
    組織学的な特徴として上皮組織内に多数の幻影細胞の出現や石灰化物を認め,象牙質の形成を特徴とするものはDGCTとされるため,組織生検を行う場合には画像所見で石灰化物が認められた場合はこれを含むように組織生検を行う必要がある。
    DGCTは外科的切除が一般的であるが再発を繰り返しやすいとされており,今回の症例でも摘出後に再発が認められた。摘出に際しては切除範囲を考慮し十分な安全域を確保することが重要であり,場合により顎骨離断等の処置が必要であることが考えられた。
    腫瘍切除後の経過観察は重要であり,CTやMRI等による画像検査が有効であった。
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