抄録
エナメル上皮腫に対する治療法のガイドライン策定に当たっては,顎骨保存外科療法と顎骨切除法の2種類の治療法についての適応を探ることを主目的とし,それぞれの治療法の有用性を検証した。
Clinical Question 1:エナメル上皮腫の手術について顎骨保存外科療法を適応するのはどの場合か。
骨外型/周辺型や単囊胞型,さらに充実型/多房型の一部も適応と考えられるが,単囊胞型ではさらにその亜型(サブタイプ)により手術法を決定することが勧められている。また,顎骨保存外科療法を行う際には,単純な掻把術や摘出術では高い再発率が報告されている。このため,腫瘍を摘出した後に周囲骨の掻爬や削除,カルノア液による化学的焼灼法や凍結外科の併用などが推奨されている。
Clinical Question 2:エナメル上皮腫の手術について顎骨切除術を適応するのはどの場合か。
エナメル上皮腫のいずれの症例にも適応できるが,とくに充実型/多房型や類腱型に用いられることが多い。根治性の高い治療法であるが,年齢,性別,全身状態などを考慮する必要がある。
Clinical Question 1,2に関する検証はいずれも推奨グレードはC1で,「十分な科学的根拠はないが,行うことを考慮しても良い。有効性が期待できる可能性がある。」ということになる。